33回生物科学フロンティアセミナー

 

メダカ属魚類をもちいた性決定システム、性染色体及び性決定遺伝子の進化

 

講師:成瀬 清 先生

(自然科学研究機構基礎生物学研究所 准教授)

日時:平成21年8月28日(金)14:35-16:05

場所:A13サイエンス棟 3階 323教室   

 

メダカ属魚類は東南アジアを中心に広く東アジアにまで分布している。メダカは、XX-XY型の性決定システムを持つことが1921年に會田により報告されて以来、性決定と性分化研究に長くもちいられてきた。2002年松田らによってメダカ性決定遺伝子の本体がDMRT1遺伝子の重複産物であるDMYであることが明らかとなった。これは脊椎動物の中では、ほ乳類のSRY遺伝子に続き、2番目の性決定遺伝子の同定である。その後、ハイナンメダカ、ルソンメダカ、インドメダカ等のメダカ近縁種をもちいて、DMYの保存性が検討された結果、DMY遺伝子はメダカとハイナンメダカのみに保存されており、他のメダカ属魚類には存在しないことが明らかとなった。SRY遺伝子がほ乳類全体の主要性決定遺伝子であることを考えるとメダカ属魚類の性決定システムの進化は極めてダイナミックであると予想された。そこでメダカゲノム情報をもちいて、網羅的に性決定システムと性染色体の同定を行ったところ、性決定システムとしてはXX-XYとZZ-ZWシステムが存在すること、それぞれの種の性染色体はメダカ常染色体と相同であり、しかもすべての種でメダカ・ハイナンメダカとは異なっていることが示された。我々は現在、それぞれの種からポジショナルクローニング法によって性決定遺伝子同定を進めている。このセミナーではメダカ属の性決定システムのダイナミックな側面を紹介するとともに、メダカ近縁種性決定遺伝子の同定の現状についてもお話しする。